鎌倉に泉涌寺派の法燈を伝えた願行（憲静）

願　行

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　願行（憲静）は、京都の泉涌寺や高野山で学び、京都東寺の五重塔を再建し、泉涌寺第六世を勤めた高僧。

　伊勢原の大山寺を再興したことで知られ、本尊の「鉄造不動明王像」（国重文）は願行が鋳造したもの。

　鎌倉では、北条政子が源頼朝の供養のために創建したという笹目の長楽寺（現在の安養院）、胡桃ヶ谷に創建された大楽寺（廃寺）、源実朝の供養のために創建されたとも伝えられる理智光寺（廃寺）は、願行が開いた寺と伝えられている。

　また、浄光明寺の「愛染明王像」、玉泉寺の「胎内不動」は願行作と伝えられている。

長楽寺跡碑

　長楽寺は、願行が開いたと伝えられているが、定かな事ではない。

　長楽寺は、１３３３年（元弘３年）の新田義貞の鎌倉攻めの兵火で焼失した後、大町に再建された（安養院）。

安養院

　稲瀬川のほとりに願行が開いた「安養院」という道場があって、これが現在の安養院の前身ではないともいわれている。

覚園寺参道の庚申塔

　大楽寺は、胡桃ヶ谷（浄妙寺の東の谷）に創建されたが、１４３８年（永享１０年）の永享の乱の兵火によって焼かれてしまったため、覚園寺のある薬師堂ヶ谷に移された（明治初年に廃寺）。

　覚園寺参道の庚申塔の左側辺りに大楽寺があったのだという。

覚園寺愛染堂

　覚園寺の愛染堂は、大楽寺の本堂だった建物。

　大楽寺の本尊だった「鉄造不動明王坐像」は、愛染堂に安置されている。

　「鉄造不動明王坐像」は「試みの不動」と呼ばれ、願行が江ノ島（岩屋）に参籠し、伊勢原の大山寺の「鉄造不動明王像」（国重文）を鋳造するにあたって試しに鋳造したものと伝えられている。

大山寺

　願行は、１２７４年（文永１１年）、大山寺再興のために江ノ島（岩屋）に参籠し、「鉄造不動明王像」と「こんがら童子像」、「せいたか童子像」を鋳造した（国重文）。

理智光寺跡碑

　理智光寺は、三代将軍源実朝の供養のために建てられた寺とも伝えられているが、創建年とともに定かではない。

　鎌倉幕府滅亡後に起きた中先代の乱の際に暗殺された護良親王の首を葬ったのは、理智光寺の住僧だったと伝えられている。

　明治初期に廃寺となり、本尊の木造阿弥陀如来坐像（鞘阿弥陀：土紋装飾）は、覚園寺の薬師堂に安置された。