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長谷の駕籠かきが江の島まで客を送った帰りのこと。 暗くなった極楽寺切通から海辺へと下りてくると、女が建長寺まで送ってくれるよう頼んできた。 提灯をかざしてみると、その女はびしょ濡れ。 身投げをしそこなったのだと思った駕籠かきは、関わり合いになるのを恐れて断るが・・・ 女は小判一枚を差し出してきた。 大金を見せられて断れなくなった駕籠かきは、女を建長寺まで送ることとする。 女を乗せた駕籠かきは、かなりの重さを感じるのだが、着物が濡れているせいだろうと思い走り続けた。 やがて巨福呂坂を越えて建長寺に到着。 山門を抜けて方丈の前まで行くように頼まれたので、言われたとおりに運んで女を降ろした。 女は、駕籠かきに後ろを振り返らないよう言いつけて方丈の庭へ入って行った。 気味が悪くなってきた駕籠かきが急いで帰ろうとすると、後方で大きな水音が・・・ 振り返ってみると水煙のなかに龍の姿。 驚いた駕籠かきが和尚に報告すると、和尚は平然として「あれはこの池の主だ。安房国へ行っていたのだが帰ってきたのじゃな」と言ったのだとか・・・ 駕籠かきが女からもらった小判を見てみると、それは龍の鱗だったのだという。 |
方丈 (龍王殿) |
方丈庭園 |
龍は仏教の守護神。 建長寺五世で円覚寺開山の無学祖元には、龍に守られて来日したという伝説が残されている。 建長寺の法堂の雲龍図や円覚寺の仏殿の白龍図には「法(教え)の雨を降らす」「火災から護る」という意味があるらしい。 参考までに、建長寺の方丈は「龍王殿」と呼ばれる。 |
※ | 「建長寺の龍神」の伝説は、沢寿郎先生の「かまくらむかしばなし」より。 |
建長寺の龍の爪は5本、円覚寺の龍の爪は3本。 |
建長寺は、五代執権北条時頼が宋の蘭渓道隆を招いて開いた日本で初めての「禅専門道場」。 臨済宗建長寺派大本山。 鎌倉五山の第一位。 |
鎌倉市山ノ内8 0467(22)0981 JR北鎌倉駅から徒歩15分 |
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