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しのびつる ねぞあらはるる あやめ草 いはぬにくちて やみぬべければ |
「隠れていた菖蒲の根も見えるようになりました。私もあなたへの思いをお見せします。このように言わなければ里に居続けてしまうようなので」 5月5日の端午の節供に邪気を払う「薬玉」を贈ってきた人が詠んだ歌。 おそらく、3月に「いつ参内なさるのですか」と出仕を促してきた宮の弁のおもとの歌かと。 |
今日はかく 引きけるものを あやめ草 わがみがくれに ぬれわたりつつ |
「今日は菖蒲を贈ってくださったのに、我が身は水底に隠れて涙に濡れている」 再出仕を促された紫式部の返歌。 |
薬玉は、菖蒲や蓬をあしらった円形の玉に五色の糸を垂らしたもの。 『源氏物語』~蛍の巻~では、六条院で行われた端午の節会で光源氏が玉鬘に薬玉を授けている。 この端午の節会で催された「手結」は「打毬」のことではないかともいわれる。 |
風俗博物館~道長の栄華・彰子に仕えた紫式部・源氏物語~ |
端午節会(端午の節句)は、平安時代の宮中で盛んに催され、清少納言は『枕草子』に「節供は5月に及ぶものはない」と記し、紫式部は『源氏物語』に描いている。 |
廬山寺は、紫式部の邸跡に建てられている寺。 前年末、藤原彰子のもとに出仕後、ほどなくして自宅に帰ってしまった紫式部。 とうとう5月になってしまったが、そろそろ再出仕の時なのかも。 |
紫式部の歌~出仕後すぐに里下がりした時の歌~ 紫式部の歌~春の歌を献上するよう命じられて~ 紫式部の歌~出仕を促す宮の弁のおもととの贈答歌~ 紫式部の歌~先輩女房から陰口を言われて詠んだ歌~ |
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