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露ふかく おく山里の もみぢ葉に かよへる袖の 色をみせばや |
「露に濡れた奥山里の紅葉のように、涙で紅くなった袖の色をお見せしたい」 はるか遠い所へ行こうかどうか悩んでいる人が、山里の紅葉を折って贈ってきた歌。 「はるか遠い所」は、国司となった夫(あるいは身内)の任国のことと考えられている。 |
あらし吹く 遠山里の もみぢ葉は つゆもとまらむ ことのかたさよ |
「激しい風が吹いている山里のもみじの葉に露が留まることができないように、都に留まることは難しいのでしょうね」 紫式部の返歌。 |
もみぢ葉を さそふ嵐は はやけれど 木のしたならで 行く心かは |
「もみじの葉を散らせる風は強いけれど、木の下でない所に散る気持ちにはなれません」 紫式部の返歌に対して、思い悩む人が詠んだ歌。 「木の下」は、都のことと考えられている。 |
思い悩む人との和歌の贈答が行われた年はわからないが、紫式部が父の藤原為時に同行して越前国へ下向する前のものと考えられる。 相手は、紫式部が姉君と慕っていた筑紫の君という説もある。 紫式部や筑紫の君のような受領階級の娘は、父や夫に同行して都を離れなければならず、思い悩む場面が多かったのかもしれない。 |
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996年(長徳2年)、紫式部は越前守に叙任された父の藤原為時に同行して越前国へ下向。 紫式部公園は、紫式部が越前国に下向したことを記念して整備された公園で、平安朝式庭園が再現されている。 |
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